平成30年度 京都府立医科大学附属病院 病院指標

　当院には多数の連携機関があり、多数の患者さんの紹介があります。中でも、外科的手術と比べ低侵襲な内視鏡や血管内治療など、高度な医療が必要とされる患者さんが多く、その理由として、当科ではそれぞれの治療法ごとにチームを結成し、多数の患者さんに高度で均一なレベルでの医療を提供できるよう心がけていることが挙げられます。最も患者数が多いのが内視鏡的大腸ポリープ切除術、つづいて、早期胃癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術（ESD）、経皮的もしくは内視鏡的胆管治療、早期大腸がんに対するESD、早期食道がんに対するESDと、すべて悪性疾患に対する治療です。

　胸痛や足のしびれなどで発症する心筋梗塞、足梗塞がふえており、カテーテル検査を実施して必要な方にバルーン拡張やステント留置を行なって細くつまった血管を広げ、血行を改善させます。ロータブレータや足の再生医療・外科手術・リハビリテーションと有機的につなげるのが強みです。大動脈弁狭窄に対するカテーテルによる弁留置は全国でもトップクラス。不整脈治療にも高度技術を使って治療成績を上げています。

　腎臓内科では、慢性腎臓病や糸球体腎炎を中心に、急性腎障害、高血圧、電解質異常などの診療を行っています。
　糸球体腎炎、ネフローゼ症候群に対しては、腎生検による診断から治療まで行っています。症例数の多い慢性腎臓病については、その原因や悪化因子は様々で、個々の患者さんの状態を把握し、病状・治療についての情報提供や栄養指導を行う教育入院を行っています。病状が進行した方に対しては、腎代替療法として血液透析、腹膜透析、腎移植の選択から導入についても、移植一般外科と協力しながら行っています。

　呼吸器内科の入院患者では原発性肺癌が最も多く、気管支鏡検査により確定診断を得ています。気管支鏡検査では超音波内視鏡だけでなく、クライオバイオプシーも導入し、高い診断率を達成しています。治療では多くの抗がん薬物を用いて標準治療を実施するだけでなく、呼吸器外科、放射線科と協力して集学的治療を行い、臨床試験や治験にも積極的に参加しています。その他、ポリソムノグラフィーによる睡眠時無呼吸症候群の診断や呼気NO測定によるアレルギー性気道炎症の診断など、さまざまな呼吸器疾患の診療に取り組んでいます。

　２型糖尿病だけでなく１型糖尿病も含め糖尿病発症時、コントロール悪化時の生活の見直し、治療方針の見直しなどを行う教育コントロール入院、また合併症進展予防のための治療入院を行っています。内分泌疾患については副腎皮質ホルモンを中心に下垂体、副腎髄質ホルモンを含めた負荷試験を行い治療につなげています。

　血液内科では、造血器悪性腫瘍をはじめ、貧血、凝固異常症などあらゆる血液疾患に対する診療を行っています。頻度の高い疾患は非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、急性白血病、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性疾患であり、その他の稀な疾患の診療も含め幅広く行っています。
　主な診療は、化学療法（抗がん剤治療）、放射線療法、分子標的治療（がんの増殖に必要な特定の分子を標的とした治療法）であり、骨髄バンク認定施設として造血幹細胞移植も積極的に行っています。
　近年、外来通院での実施が可能な化学療法も増えてきており、できるだけ患者さんの日常生活を維持しながらの治療を目指しています。
　当科では、血液専門医・指導医、造血細胞移植認定医、輸血・細胞治療認定医、がん薬物療法専門医など、各領域の専門医の主導のもと、看護師、薬剤師、移植コーディネーターといった多職種から成るチームで診療を行っています。それぞれの患者さんに対し、診断から初回、再発治療あるいは緩和的治療に至るまで、最新のエビデンスに基づいた最適な診療を心がけています。

　膠原病・リウマチ・アレルギー科では自己免疫性疾患、リウマチ性疾患、アレルギー性疾患の診療に当たっています。対象疾患としては、全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎・皮膚筋炎、血管炎症候群などの自己免疫性疾患、および関節リウマチです。
　リウマチ専門医・指導医が診断・治療にあたり、それぞれの患者さんに最適な治療をチームで総合的に検討しながら治療に当たっています。
　関節リウマチの診療についてはリウマチセンターを併設し、整形外科とともに積極的に行っており、生物学的製剤および新規低分子治療薬なども患者さんのニーズ、疾患の状態、患者さんの背景、予想される効果などを考慮しながら投与しています。アレルギー疾患も積極的に治療を進めています。

　当科の特徴は脳梗塞やてんかんなどの急性疾患からパーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症、認知症などの神経変性疾患・神経難病、さらには希少難病に対応している点です。最も多い疾患は脳梗塞であり、t-PAによる超急性期治療も行っております。急性期を過ぎると回復期リハビリテーション病院と連携し治療を継続して頂いております。免疫介在性神経疾患（多発性硬化症、重症筋無力症、CIDPなど）や基底核などの変性疾患（パーキンソン病およびパーキンソン関連疾患）、運動ニューロン疾患（筋萎縮性側索硬化症など）、およびてんかんについてはそれぞれの疾患群を専門とする神経内科医の主導のもとに最新のエビデンスに基づいた診断・治療を行っております。

　大腸がんは本邦では消化器がんの中で最も患者数が多く、増加傾向にあります。当院では大腸がん手術の約９割に腹腔鏡手術を実施しており、最近は直腸がんに対するロボット手術も行なっています。
　次に多いのが胃の悪性腫瘍に対する胃切除です。当院では約６５％に腹腔鏡手術を実施し、ロボット手術も早期がんに行なっています。
　当院では、がんに対する手術だけでなく胆のう結石症や胆のう炎といった良性疾患に対する手術も行なっており、そのほとんどが腹腔鏡下手術です。

　虚血性心疾患や弁膜症などの心臓の病気や、大動脈瘤や末梢血管など血管の病気を、外科的に治療しています。
　１番目と４番目は、弁膜症に対する弁置換術や弁形成術などの手術です。弁膜症とは、心臓内に血液の逆流防止のためについている弁の疾患であり、これらに対して自己の弁を温存して治す弁形成術や、悪い弁を取り替える弁置換術を行います。当院ではできるだけ自己組織を温存する弁形成術を行い、これが困難な場合には人工弁を用いた置換手術を行います。
　２番目に多いのは大動脈瘤に対するステントグラフトによる治療です。大動脈瘤は、血液を全身へ送るパイプの役割をしている大動脈が瘤状にふくれる病気であり、ステントグラフトと呼ばれる、人工血管をたたんでカテーテルで瘤の部分に進め人工血管を広げる血管内治療を行っています。通常の開胸開腹手術と比較すると、鼠径部の小さな傷だけで行う事ができ、手術後の回復も早いため、高齢の方や合併疾患をお持ちの方にも行うことができます。若い体力のある方に対しては開胸開腹手術を行い、患者さんの状態に応じて最適な治療を選択します。
　狭心症・心筋梗塞に対して行う冠動脈バイパス手術についてもできる限り人工心肺を用いずに心臓を止めずに行うバイパス手術を第一選択としています。
　このように、近年の高齢化・ハイリスク化に対応して、できるだけ患者さんの負担を減らす手術を心がけています。

　早期肺がんには低侵襲な胸腔鏡下肺がん根治術を、局所進行肺がんには直視下開胸根治術を行い、肺がんの治癒を目指しています。

　当科では乳腺に関するトータルケアを行っています。
　乳腺に関するすべての疾患について診断・治療を行いますが、そのほとんどが乳がんです。近年は研究が進んできており、同じ乳がんでもその生物学的な特性に応じて治療法は随分異なります。われわれはその特性に応じた治療をご提案しています。

　腎不全治療として腎移植を積極的に行っており、必然的に透析療法及び内シャント形成術を実施しています。また、関西では有数の腎移植を実施しています。

　形成外科では、体表の傷口や変形を確実にきれいに治すことを念頭に治療にあたっています。特に代表的な疾患として、乳がんの切除に伴う乳房の欠損・変形に対して腹部や背部の脂肪を利用する自家組織再建と、組織拡張器やシリコンインプラントを利用する人工物再建との双方を行っています。
　また、先天性疾患である口唇裂・口蓋裂に対しては、乳児期から大人になるまで、口唇形成術・鼻形成術・口蓋形成術・顎裂部骨移植術などを行っています。
　耳・手指・足趾などあらゆる先天性疾患に対応しています。
　皮膚のできものなどのありふれた疾患にも整容性を重視した治療を行っています。

　未破裂脳動脈瘤については、外来に近隣施設より数多くの症例が紹介されています。外科治療の適応については、十分に時間をかけて患者さん、ご家族と相談した上で決定します。治療は主にコイル塞栓術を行い、退院後も外来できめ細かな経過観察を続けています。脳内出血やその他の脳血管障害（脳梗塞など）は24時間体制で受け入れており、集中的な急性期治療と早期リハビリテーションにより機能予後の改善につとめています。当施設では悪性脳腫瘍の診断、治療を得意としており、手術のみならず放射線治療や化学療法にも積極的に取り組んでいます。慢性硬膜下血腫に対しては、速やかに手術とリハビリテーションを行うことで、患者さんの早期退院と社会復帰を目指しています。

　整形外科では、小児から高齢者まで幅広い運動器の疾患に対する保存療法と手術療法を行っています。中でも、非常に多くの関節疾患（股関節や膝の変形性関節症など）の患者さんを治療しています。手術は、関節の機能再建を目的とした人工関節置換術や関節の温存を目的とした様々な骨切り術を多く行っています。また、全国でも数少ない小児整形外科部門があり、小児の上下肢変形に対する骨切り術・変形矯正手術も行っています。綿密な術前計画と高度な手術手技のみならず、術後のリハビリテーション治療まで一貫した治療を行うことで非常に良好な治療成績を上げています。

・子宮内膜症に関して臨床研究とも全国的にも評価されており日本国内から患者さんが来院します。比較的難症例が多いにも関わらず、安全に遂行できています。（平均在院日数が全国平均より短い）
・悪性腫瘍手術についても徐々に症例数は増えています。

　白内障は目の中にあるレンズが濁る病気です。年齢とともにほとんどの人がかかります。緑内障は目の内圧が高くなり、見える範囲が狭くなる病気で、年齢とともに多くの人で発症します。両目の位置、まぶた、目の中のゼリーである硝子体、目のフィルムである網膜、目のまわりの骨折、腫瘍など、小さい領域ですが驚くほど多様な目の病気すべてに対応しています。

　悪性黒色腫をはじめとする皮膚がんに対して手術療法、化学療法、放射線療法等による集学的治療を数多く行っています。（外来化学療法センターで行っている免疫チェックポイント阻害剤や一部の抗がん剤による治療については本指標に含まれていません。）また皮膚の良性腫瘍についても、ドレーンの留置や植皮術、皮弁作成術などによる再建術が必要となる場合には入院での治療を行っています。

　体に優しい、生活の質を維持できる、低侵襲な、新しいがん治療の選択肢（内視鏡下手術、腹腔鏡下手術、内放射線治療など）を、従来の標準とされる侵襲的な治療選択肢（全摘手術、外放射線治療など）と、ともに患者さんに提示し、「がんの制御」と「生活の質」の維持の両立を図ることを積極的に進めています。その治療選択肢の適切な判断が重要であり、最新の画像診断および精度の高い診断技術も導入し、治療成績の向上を実現しています。

　当院では頭頸部悪性腫瘍の治療に関し専門病院として最先端の医療を提供しています。頭頸部悪性腫瘍としては口腔、咽頭、喉頭の癌、唾液腺癌、甲状腺癌などすべての頭頸部領域の手術治療を担っています。
　副鼻腔の内視鏡手術は副鼻腔炎を始めとする鼻副鼻腔の炎症性疾患、腫瘍性疾患を対象とし、多くの症例を手掛けています。

　放射線科では各診療科からの依頼を受け、主に各診療科入院で様々のIVR手技を行っています。
　放射線科の入院でのIVR手技を行うこともあり、肺腫瘤に対するCTガイド下生検が最も多く、小さい腫瘍であっても90％以上の高い正診率で検査が可能で、術後翌日に退院できることが殆どです。また、骨腫瘍や腹部腫瘍など頭蓋部以外の全身の生検、腎癌に対する凍結治療、膿瘍ドレナージ術なども行っています。
　他には、肝癌に対する肝動脈化学塞栓療法や胃静脈瘤、内臓動脈瘤、血管奇形、出血などに対する塞栓術、埋め込み型中心静脈カテーテル留置術など多種に渡るIVR手技を行っています。
　放射線治療部門においては、甲状腺悪性腫瘍に対し、放射線治療病室に入院の上、放射性ヨードを内服することにより非侵襲的ながんの治療を行っています。

　食物アレルギーは、乳幼児の約10%、児童・生徒の約5%に認める頻度の高い疾患です。以前は、少しでも症状がある、血液検査で特異的IgE陽性であると除去されることが一般的でしたが、現在は経口負荷試験によりアレルギーがあるのか、また少量でも症状なく摂取できる量があるのかを確かめることで、必要最小限の食物除去（食事指導、経口免疫療法）が行われています。一方で経口負荷試験による重篤なアナフィラキシーの誘発も問題となっています。当院では、地域医療連携を通じて地域の先生方より、強いアナフィラキシー症状のため摂取ができない食物アレルギー児の紹介を数多くいただき、リスクを評価した食物経口負荷試験を実施し（平成30年度入院140件、外来344件実施。アドレナリン使用なし）、安全な摂取量を確認し、開始することによる食生活の改善や耐性獲得を目指しています。
　当院は小児循環器学会修練施設に認定されており、京都の心臓病患者の診断・治療を一手に引き受けています。小児心臓血管外科との共同診療体制により、先天性心疾患においては全国的にもトップクラスの治療成績をあげています。具体的には、平成30年（1/1～12/31）の心臓カテーテル検査件数は、診断カテーテル 131件、カテーテル治療 51件、うちアブレーション 4件、循環器内科との合同カテ（治療）2件であり、昨年度と比較してカテ―テル治療が約20件増加しました。他大学病院・医療機関からの紹介によって、近畿圏は勿論、全国から患者さんを受け入れており、今後も患者数の増加が見込まれます。
　当院新生児集中治療室(NICU)では、小児科が主治医を担当し、年間約200人の入院患者を受け入れています。出生時体重を問わず入院の受け入れをしており、特に先天性疾患、染色体疾患などの当院でしか対応できないような重症新生児を、小児外科、小児心臓血管外科、脳神経外科、整形外科、泌尿器科、形成外科などの他診療科と連携して、新生児の集中治療・管理を行っています。
　当院は、厚生労働省より全国に15施設しかない小児がん拠点病院に指定されており、また、全国で数少ない陽子線治療センターを稼働していることから、脳腫瘍をはじめ、あらゆる小児がん種の患者さんを受け入れ、治療を行っています。脳腫瘍に関しては小児科、脳神経外科、放射線科および看護部を含めた多職種カンファレンスを実施し、治療計画を立案・遂行しています。今年度からは脳腫瘍患者に副作用のより少ない陽子線治療を開始し、現在までにすでに複数名の治療を行っています。今後も副作用や合併症が最小限またはなく、最大限の効果が発揮されるようなより良い治療を目指して、研究と治療を行っていきます。

　小児外科では、0-15歳までの小児（新生児を含む）の心臓、脳以外のあらゆる臓器の外科疾患に対する診断と治療を行っています。
　主要疾患として、入院患者数が多いのは、鼠径ヘルニア・陰嚢水腫、次に移動性精巣・停留精巣です。これらは当科で最も手術件数の多い疾患になります。
　また、新生児外科症例は京滋地区で最多を誇っています。通常の新生児外科疾患のみならず、超低出生体重児に対する緊急手術や、多臓器に疾患を持つ重症患児に対しても、新生児科などと協力して専門的な医療を行っております。
　さらに消化器機能疾患に対する診断を行うことが挙げられます。胃食道逆流症および便秘症は小児において非常に多く、これらの検査入院が上位に挙がってきます。京滋で唯一、食道インピーダンスpHモニタリング、直腸肛門内圧検査や直腸粘膜生検などの特殊検査を施行する事ができる施設です。
　また、難治性疾患である血管・リンパ管奇形の治療にも積極的に取り組んでいます。従来の硬化療法に加え新しい治療薬である漢方薬やmTOR阻害剤などを使用し、全身に発症する可能性のあるこの疾患に対して、患者さんに応じた治療に取り組んでいます。
　さらに、当院は小児がん拠点病院に認定されており、入院が小児科主体のため計上はされませんが、小児悪性腫瘍患者に対する集学的治療の一環として外科治療も多数おこなっています。

　小児心臓血管外科では、あらゆる先天性心臓疾患に対して、質の高い手術を行なっており、その対象年齢は生後間もない新生児から成人まで幅広くなっています。
　当院では重症度の高い疾患の割合が多いですが、平均在院日数は全国平均より短く、良好な手術成績をおさめています。

　救急医療科では全診療科・各科専門医の常駐する総合病院での救急診療体制をとっています。当科では年齢や病態を問わず、幅広い医療の提供をしています。
　最も多い症例は腎臓または尿路の感染症で、次に頭蓋・頭蓋内損傷の順となっています。

　最も患者数が多いのは、内視鏡的大腸ポリープ切除術で、一般的にポリペクトミーと言われている治療で1泊2日の入院で行っています。続いて、早期胃癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術（ESD）、早期大腸がんに対するESD、膵癌や胆道癌に対する内視鏡的胆道ステント留置術、早期食道がんに対するESDと、すべて悪性疾患に対する治療です。

　動脈硬化による心血管病がふえており、心臓（冠動脈）や足（四肢抹消動脈）に対するカテーテル治療が中心です。非常に短い入院期間で治るため、他院に転院して療養する必要も少なく、自宅へすぐに帰れます。大動脈弁置換は外科手術のできない高齢の方が対象。しっかり心臓リハビリをして回復をはかりますが、１／３くらいの方はお近くでリハビリを継続していただきます。不整脈治療は心筋焼灼術で行ないますが、冷凍バルーンや高周波など最適の方法を選び、複雑な方法も使って成功率を上げています。

　血液内科では、年間約20例の自家・同種造血幹細胞移植を行っております。また骨髄バンクの認定施設として、骨髄バンクドナーの幹細胞採取（骨髄採取、末梢血幹細胞採取）も実施しております。
　その他、診断に必要な組織生検や手術的処置を各専門科の協力のもとで実施しており、当科の治療を安全かつ円滑に進められるように心がけています。

　筋萎縮性側索硬化症などにより嚥下障害が進行した神経疾患患者に対して消化器内科と連携して胃瘻造設を行い、在宅診療への橋渡しをする症例も増えております。

　消化器がんの中で最も多い大腸がんに対して、約９０％の症例に腹腔鏡下手術を実施しており、直腸がんに対してはロボット手術も導入しています。次に多い悪性腫瘍手術は食道がんです。当院では非開胸の縦隔鏡下手術を積極的に行なっており約９５％で低侵襲手術を行なっています。
　次に多いのは胃がんです。早期がんに対しては腹腔鏡やロボット手術を行なっています。
　腹腔鏡下手術は一般的に傷が小さく、手術後の患者さんの負担が軽いとされています。

　虚血性心疾患や弁膜症などの心臓の病気や、大動脈瘤や末梢血管など血管の病気を、外科的に治療しています。
　最も多いのは弁膜症に対する弁置換術や弁形成術などの手術です。
　弁膜症とは、心臓内に血液の逆流防止のためについている弁の疾患であり、これらに対して自己の弁を温存して治す弁形成術や、悪い弁を取り替える弁置換術を行います。当院ではできるだけ自己組織を温存する弁形成術を行い、これが困難な場合には人工弁を用いた置換手術を行います。
　2番目の治療は、大動脈瘤に対するステントグラフトによる治療です。
　大動脈瘤は、血液を全身へ送るパイプの役割をしている大動脈が瘤状にふくれる病気であり、ステントグラフトと呼ばれる、人工血管をたたんでカテーテルで瘤の部分に進め人工血管を広げる血管内治療を行っています。通常の開胸開腹手術と比較すると、鼠径部の小さな傷だけで行う事ができ、手術後の回復も早いため、高齢の方や合併疾患をお持ちの方にも行うことができます。若い体力のある方に対しては開胸開腹手術を行い、患者さんの状態に応じて最適な治療を選択します。
　3番目に多いのは狭心症・心筋梗塞に対して行う冠動脈バイパス手術で、これについてもできる限り人工心肺を用いずに心臓を止めずに行うバイパス手術を第一選択としています。
　このように、近年の高齢化・ハイリスク化に対応して、できるだけ患者さんの負担を減らす手術を心がけています。

　積極的に胸腔鏡下手術を行い、肺がん、気胸、縦隔腫瘍の治療に取り組んでいます。

当科の特徴は以下のような乳房同時再建手術を併用した乳がん手術を随時受けていただける点です。
●乳房温存手術；比較的小さなしこりに対して行います。
●乳房切除術；乳頭を含めた乳房の全摘出を行います。
●自家組織による乳房同時再建手術；形成外科と合同で実施します。
●センチネルリンパ節生検；RI法・色素法の併用法により同定率98％。

　腎移植術以外に、肝移植や一般外科として内視鏡を用いた鼠径ヘルニア修復術を行っています。

乳房再建・口唇口蓋裂形成などが主要手術疾患です。
また、耳、手指・足趾など、あらゆる先天性疾患の手術に対応しています。
可能なかぎり、整容・審美的な改善になるよう配慮しています。

　当科ではグリオーマや転移性脳腫瘍などの悪性脳腫瘍、また髄膜腫や神経鞘腫といった良性脳腫瘍に対し、ナビゲーションシステムや電気生理学的モニタリング、さらには覚醒下手術などの最先端治療技術を駆使し、確実な外科治療を行っています。高齢者が多い慢性硬膜下血腫については、局所麻酔下で低侵襲に手術を行うことで、早期退院を可能にします。頚動脈ステント留置術をはじめ、コイル塞栓術や血栓回収術といった脳血管内手術にも24時間体制で取り組んでおり、専門医資格と豊富な経験を有するスタッフが直接治療に当たっています。変形性脊椎症、椎間板ヘルニアなどの脊椎変性疾患に対しても、経験豊富な専門医が診断から手術まで一貫して診療し、良好な成績を得ています。

　変形性関節症（肩、股、膝関節）に対して機能再建を目的とした人工関節置換術の豊富な症例数があります。また、関節疾患の病状に応じて、関節鏡を用いた低侵襲手術も行っています。脊椎疾患に対する手術では、内視鏡や顕微鏡を用いた低侵襲手術やコンピュータナビゲーションシステムを用いた手術など、安全で精度の高い除圧術や固定術を行い、良好な治療成績を上げています。変形が高度な外反母趾に対して矯正手術も多数行っており、良好な治療成績を上げています。悪性骨軟部腫瘍に対しても効果的な手術療法と化学療法、放射線療法を組わせた集学的治療を行い、患肢温存と生存率において良好な治療成績を上げています。

・子宮内膜症に対する手術が上位を占めています。
・良性手術は術後４-５日程度で退院可能であり、病棟の回転率は高いことがうかがえます。

　白内障手術は我が国でもっとも件数の多い手術です。当院では多くが入院でなく通院手術でおこなわれています。白内障手術後には眼内レンズを目にいれて焦点をあわせます。多焦点眼内レンズや乱視矯正眼内レンズを用いた手術もおこなっています。
　角膜手術、緑内障手術、網膜硝子体手術、斜視手術、眼形成手術などすべての分野において、トップレベルの手術が施行できています。

　毎年１００例を超える皮膚がん手術（皮膚悪性腫瘍切除術、四肢・躯幹軟部悪性腫瘍切除術、女子外性器悪性腫瘍切除術等）を行っています。一番症例数が多かった皮膚悪性腫瘍切除術（単純切除）にはセンチネルリンパ節生検を同時に行った症例（２３例）が含まれています。また、熱傷や外傷、糖尿病性皮膚潰瘍、静脈性皮膚潰瘍に対する植皮術も数多く行っています。

　膀胱腫瘍については、低侵襲的な内視鏡下切除術による臓器温存を、腎腫瘍に対しては、最先端のロボット支援による腹腔鏡下腎（尿管）悪性腫瘍の部分切除手術、および、さらに低侵襲な経皮的腎腫瘍の凍結治療を、積極的に取り入れ、京都府下のみならず、広く関西圏からも、これらの体に優しい腎機能温存治療を目的に紹介患者が多数希望されています。前立腺腫瘍に対するロボット支援手術はすでに標準的に実施しています。頻度の高い尿路結石症に対する治療にはレーザーを用いた結石破砕効率の向上を追求しています。

　耳鼻咽喉科領域において多くをしめる中耳炎症性疾患、副鼻腔炎症性疾患に対し、中耳手術（鼓室形成術）、内視鏡下副鼻腔手術を多くの患者さんに対し行っています。繊細な手術で、機能を回復させるための細かな手技が必要です。
　甲状腺癌は年々増加傾向にあり、これに対する根治手術を数多く行っています。当院は甲状腺外科専門施設として学会認定されています。

　当大学は京都の心臓病患者の診断・治療を一手に引き受けており、小児心臓血管外科との共同診療体制により、先天性心疾患においては全国的にもトップクラスの治療成績をあげています。なかでも大動脈縮窄（離断）症手術（単独）については、大動脈縮窄(複合) 7件, 大動脈弓離断3件を経験しており、平成30年（1/1～12/31）の年間手術件数である149件を牽引する疾患群となっています。他大学・医療機関からの紹介によって、近畿圏は勿論、全国から患者さんを受け入れており、今後も患者数の増加が見込まれます。
　早産、低出生体重児、先天奇形症候群などのハイリスク新生児においては小児科医が24時間体制で分娩に立ち会い、新生児仮死に対して出生後の速やかな新生児蘇生を行い、その後の新生児集中治療室(NICU)での入院管理を行っています。

　小児外科における主要手術は、鼠径ヘルニアに代表される日常的に小児に見られる疾患に対する手術で、年間手術数の約1/3を占めます。
　鼠径ヘルニアに対しては、開放手術であるポッツ法及び腹腔鏡手術をおこなっています。停留精巣、臍ヘルニアに対する手術、腸重積症に対する高圧注腸整復など。侵襲が少なく安全で短期間の入院となるように努めています。
　また、新生児手術件数、小児腫瘍手術件数はそれぞれ京滋最多を誇っており、緊急手術に対しても24時間365日体制で様々な小児症例に対応しています。

　小児心臓血管外科において、先天性心疾患に対する心臓手術の内訳は、軽症から重症度の高い複雑心奇形手術まで、また新生児から成人に至るまで万遍なく、幅広い術式に及んでいます。その多くは術後約２週間で自宅退院され、良好な手術成績をおさめています。